ジョルジーニョとは?
イタリア代表を支える中盤の要
ジョルジーニョ(Jorginho)は、近年の欧州サッカーシーンを語るうえで欠かせない存在として知られている守備的ミッドフィールダー(DMF)です。ブラジル生まれながらイタリア国籍を持ち、イタリア代表の中盤を支える“レジスタ”あるいは“アンカー”のような役割を担っています。
UEFA欧州選手権(EURO 2020/大会は2021年開催)優勝をはじめ、クラブレベルでもUEFAチャンピオンズリーグなどのビッグタイトルを次々と獲得してきたことで、その存在感はワールドクラスの域に達しました。
本稿では、ジョルジーニョのパーソナルデータからプレースタイル、クラブおよびイタリア代表での活躍ぶり、そして人柄や評価まで、多角的に掘り下げます。サッカーファンはもちろん、あまり詳しくない方にもわかりやすいように丁寧に解説していきます。
ジョルジーニョのプロフィール
二重国籍が生んだイタリア代表の頭脳
本名:ジョルジ・ルイス・フレーロ・フィーリョ(Jorge Luiz Frello Filho)
登録名:ジョルジーニョ(Jorginho)
生年月日:1991年12月20日
出身地:ブラジル・イモビ(イタリア北部で育ったとも言われる)
身長・体重:約180cm・約65kg(時期によって異なる場合あり)
ポジション:守備的ミッドフィールダー(DMF)/アンカー
ジョルジーニョはブラジルで生まれたのち、比較的若い時期にイタリアへと渡り、サッカー選手としての基礎をイタリアで培いました。ブラジルとイタリアの二重国籍を所持しており、代表にはイタリアを選択。EURO 2020(大会は2021年開催)では、決勝のPK戦を含めて中盤の安定感を示し、チームの優勝に貢献したことで一躍脚光を浴びました。
キャリア序盤
エラス・ヴェローナでの成長とナポリ移籍
ジョルジーニョのサッカーキャリアは、イタリアのクラブで大きく花開きました。
最初に名を馳せたのが、当時セリエB(イタリア2部)に所属していたエラス・ヴェローナ。そこで試合に出場しながら、守備とパスセンスを磨いていきました。
昇格後のセリエAでも持ち味を十分に発揮し、ボール回しの軸として監督やチームメイトから高い評価を得ていきます。
その活躍が注目を集め、2014年1月にSSCナポリへ移籍。ラファエル・ベニテス監督の下でプレーを始めました。途中交代やターンオーバーでの起用が最初は多かったものの、持ち前の正確なパスとインテリジェンスを認められ、着実にチーム内での地位を固めていきます。
やがてマウリツィオ・サッリ監督が就任すると、さらなるステップアップが訪れました。サッリの志向するポゼッションスタイルにジョルジーニョが適合し、ナポリは攻撃的かつ美しいサッカーでセリエAの優勝争いを繰り広げるチームへと成長。
ジョルジーニョは中盤の底で攻撃を組み立てるレジスタとして、「ナポリの心臓」と称されるほどの存在感を示すことになります。
チェルシー時代
プレミアリーグでの適応とタイトル獲得
2018年、マウリツィオ・サッリ監督がイングランドのチェルシー(プレミアリーグ)へ就任すると、ジョルジーニョもチェルシーに移籍。
イタリア流のパスサッカーをイングランドで体現する上で欠かせない存在として期待を受けたわけですが、プレミアリーグ特有の激しいフィジカルコンタクトや速い攻守の展開に最初は苦労した面もありました。
しかし、シーズンを重ねるごとに適応力を発揮し、周囲との連係を深めたジョルジーニョは、チェルシーの中盤で欠かせない選手へと成長。
メイン監督がサッリからフランク・ランパード、トーマス・トゥヘルと変わるなかでも継続的に出場機会を得て、次のような主要タイトルをチームにもたらしています。
- UEFAヨーロッパリーグ(2018-19シーズン)優勝
- UEFAチャンピオンズリーグ(2020-21シーズン)優勝
- UEFAスーパーカップ(2021年)優勝
- FIFAクラブワールドカップ(2021年)優勝
2021年にはEURO優勝やチャンピオンズリーグ制覇の実績が評価され、UEFA年間最優秀選手賞(UEFA Men’s Player of the Year)を受賞。
チェルシーでの活躍は、守備的MFながらも世界的スターの仲間入りを果たす大きなステップとなりました。
アーセナルへの移籍
ロンドンでの新たな挑戦
ジョルジーニョは2023年初頭、同じロンドンに拠点を置くアーセナルへ移籍し、さらなる注目を集めています。
アーセナルはミケル・アルテタ監督の指揮の下、プレミアリーグ優勝争いに加わる強力なチーム作りを進めており、若手を中心とした攻撃的サッカーを展開中。
そこにベテランとしてジョルジーニョが加わったことで、中盤のバランス調整や落ち着きを与える効果が期待されています。
移籍当初は「どこまでフィットできるのか」という声もありましたが、基本的にはビルドアップの起点や守備面での位置取りなど、プレースタイルがチームの求める戦術と合致しやすいとされ、アーセナルのゲームコントロールに貢献すると考えられています。
既にジョルジーニョはプレミアリーグで実績を積んでおり、強豪相手の試合も経験豊富。ロンドンという同じ街でのステップアップ移籍となるため、サポーターからは大きな期待と歓迎をもって迎えられました。
イタリア代表での活躍
EURO制覇とチームへの貢献
ジョルジーニョがイタリア代表で本格的に注目されたのは、やはりEURO 2020(開催は2021年)の活躍です。
ロベルト・マンチーニ監督が構築した攻撃的かつバランスの取れたチームにおいて、ジョルジーニョは中盤の底で試合のテンポを作り、攻守両面で重要な役割を果たしました。
特筆すべき点は、彼のパス成功率が常に高いレベルを維持していたことと、相手のカウンターを未然に防ぐポジショニングの巧みさです。
決勝のイングランド戦ではPK戦まで持ち込まれましたが、ジョルジーニョ自身がPKを外す場面もあったにもかかわらず、チームは見事に優勝を勝ち取りました。
大会を通じて、1試合平均でのパス回数やインターセプト数でもトップクラスの数字を叩き出し、名実ともに“イタリア代表の心臓”と呼ばれる存在感をアピール。
このEUROでの優勝を機に、世界的な評価がさらに高まり、2021年のバロンドール投票でも上位にランクインするなど、個人としても輝かしい実績を積み重ねました。
プレースタイルと特徴
パスセンスとインテリジェンスの融合
ジョルジーニョのプレースタイルを一言で表すならば、“ポゼッションサッカーを支える司令塔”です。
守備的MFというポジションながら、華やかな攻撃はそれほど得意としないものの、極めて高いパス成功率と戦術的理解度でチームの要となります。以下では、主要な特徴を整理してみましょう。
- ビルドアップ能力
後方からボールを受け、素早いパスで攻撃を組み立てる。横パスやバックパスだけでなく、縦のパスコースを見つけ出す視野の広さが特長です。 - ポジショニングの妙
ピッチ全体のバランスを見ながら、味方のカバーに入ったり、最終ラインと中盤の間でのスペースを埋めたりといった細かい動きが秀逸。相手のカウンターを未然に防ぐのにも長けています。 - 安定感のある守備
タックルの派手さはさほどありませんが、常に相手のパスコースを消すような位置取りをし、地道な球際の対応やインターセプトで貢献。過度にファウルをしない点もチームにとって信頼度が高い要因です。 - メンタル面の強さ
大一番でも冷静にプレーでき、ミスがあっても引きずらない。PKを外したり失点に絡んだりしても、すぐに切り替えてチームを支える姿勢が高く評価されています。
主要タイトルと個人賞
実績で示すワールドクラスの証
ジョルジーニョのキャリアは、数々のタイトルによって彩られています。以下に主な実績・個人受賞を列挙します。
- イタリア代表
– UEFA欧州選手権(EURO 2020)優勝 - クラブレベル
– チェルシー(2018~2023)在籍時:
• UEFAチャンピオンズリーグ優勝 (2020-21)
• UEFAヨーロッパリーグ優勝 (2018-19)
• UEFAスーパーカップ (2021)
• FIFAクラブワールドカップ (2021)
– アーセナル(2023~)移籍:
• プレミアリーグ優勝争いに貢献(在籍期間内におけるタイトル獲得は今後に期待) - 個人賞
– UEFA年間最優秀選手賞(2020-21)
– バロンドール最終候補:2021年に上位にランクイン
人柄・評価・エピソード
チームメイトから信頼される理由
ジョルジーニョは
練習態度
やピッチ外での言動においても高く評価されています。
監督やチームメイトからは、以下のような言葉がしばしば語られます。
- 「落ち着きがあり、試合の流れを変えるパスを常に用意している」
- 「若手選手の相談にも乗るリーダーシップがある」
- 「激しい試合でも自分を見失わず、周囲を鼓舞してくれる存在」
また、ジョルジーニョ自身はブラジル人らしい明るさを持ちながら、イタリア流の献身性・戦術理解を兼ね備えているという稀有なプレースタイルが特徴です。
チェルシー時代、移籍当初は“守備力が弱いのではないか”と一部批判も受けましたが、時間をかけてフィジカル面・ポジション取りで対応。最終的に結果とタイトルで応えました。
まとめ:
世界的なレジスタとしての地位を確立したジョルジーニョ
ジョルジーニョはイタリア代表の中盤だけでなく、クラブでもプレミアリーグやセリエAなどで長く活躍し、多くのビッグタイトルを獲得した“ワールドクラスのレジスタ”です。
ブラジル生まれでありながらイタリアに渡り、二重国籍を武器にイタリア代表を選択し、EURO制覇という歴史的快挙を達成。
チェルシーからアーセナルへの移籍など、ロンドンを拠点にさらなる飛躍を目指しており、今後も欧州の舞台で中心的役割を果たすことが期待されています。
プレー面では、高いパス成功率とチームのリズムを作る能力が目立ちますが、守備においても堅実なポジショニングやインターセプトで大きく貢献。
また、精神的な強さが際立ち、大一番でも冷静にタスクをこなせる点が評価ポイントです。
世界のトップレベルが集まるプレミアリーグやUEFAチャンピオンズリーグでの実績、そしてイタリア代表としてのEURO優勝――いずれも、ジョルジーニョのキャリアを語るうえで欠かせない実績となっています。
今後はアーセナルの一員として、若く勢いのあるチームをどう支え、さらに自身のタイトルを上乗せしていくのか。
ブラジルとイタリアのハイブリッドが生み出す独特のプレースタイルは、ファンも専門家も目が離せない要素と言えるでしょう。
ジョルジーニョは間違いなく、これからの欧州サッカーシーンを彩る中心人物のひとりとして、まだまだ輝き続けるはずです。